みなさま、こんにちは。
北海道は大分寒くなってまいりました。
まだ、暖房を入れないで頑張らないと、とやや手もかじかみながら打ち込んでおります。
もうすっかり秋です。
紅葉はまだそれほど色づいておりませんが
台風の影響やらでぐっと冷え込んでおります。
さて、少し更新が遅れてしまいました。
ちょっと、色々と筆が進まず。
ネタはため込んでおります。が。。。
すみません。
さて、ちょっと刺激的なことがあったので
鞭打って筆をとることにしました。
先日、竹中工務店の松隈章氏の講演会があり聴講に行ってまいりました。
全く知らなかったのですが、先輩ということで講演会の後
少しお話もさせていただけました。
松隈氏は建築家、藤井厚二の代表作「聴竹居(ちょうちくきょ)」
の保存、研究の第一人者であり、
実測集をはじめ、多くの著書を残しています。
現在に至るまで非常に大変な思いをして
聴竹居に関わってきているようでした。
そして、「聴竹居」の生みの親である「藤井厚二」とは。
この道の人間なら通る道ではあるが
一般の人は知る由もないかと思います。。。
1888年 広島県福山市生まれ。
僕の好きな建築家、村野藤吾の三歳上の世代。
東京帝国大学工科大学建築学科卒業後、竹中工務店に入社。
1926年には京都帝国大学教授となり
1928年に自邸として、5棟目の「聴竹居」完成させ、
それから10年後の1938年に逝去。
49歳という若さでした。
そして、この「聴竹居」で、
自らが確立した環境工学を生かして日本の気候・風土と
日本人の感性とライフスタイルに適合した「日本の住宅」を
実現しようとした最初の建築家なのです。
現在建築家が取り組んでいる
一連のパッシブデザインのさきがけでもあります。
実に当時としては前衛だったわけです。
実はこれ、ゲント建築行脚で10年ほど前にすでに見に行っておりました。
せっかくの機会なので、古い写真整理しながら
綺麗に仕立て直したのでご紹介いたします。
建築とは言葉で語るものではないので
写真からできるだけ空気感を読み取っていただければと思います。
よって、解説は最小限に。
では!
聴竹居は京都の大山崎にあり、天王山の麓にあたります。
大山崎の駅を降りてからややしばらく山道を登ってゆきます。
やや疲れながら見上げるとこのような石段が待ち構えます。
登りきると玄関が見えてきます。
これは外観のメインカットです。
実に和の延長とというか、洋も若干入っているくらいの印象でしょうか。
意匠としてもかなり複雑で、ギリギリのバランスを攻めている感じがします。
ある一定の巨匠のデザインには通底するバランス感覚があり、
世界の巨匠建築家の中には、近いプロポーションを見つけ出すことができます。
おそらく、収斂していくと辿り着く意匠の世界なのだと思います。
それでも、この屋根型に関しては日本独自の形態といっても過言ではないと思います。
こちらが玄関。
非常に幾何学を上手に用いております。
ドアに窓ガラスがまとわりつくようなプロポーション。
なかなか普通はこうしません。
玄関内部。
玄関ドアの方向を見返した写真。
照明もすべて一点物のデザイン。
そしてこの住宅は円弧がいくつか用いられ、空間に独自の華やかさというか
艶やかさを加えることに成功しています。
恐らく、最小限の曲線で最大の効果を生み出している。。。
それにしても様々な構成物が交わりあうことによって、一体感が生まれております。
こちらが居間です。
右の1/4円形のくりぬきが印象的で一度見ると忘れられない住宅です。
そして、画面中央に時計がかかっております。
実はこれ、建築家マッキントッシュのものと同一のものだということです。
こちら拡大したもの。
壁に組み込まれてデザインされております。
住宅を全体を貫く幾何学的デザインはマッキントッシュからも影響を受けたのでしょうか。
わが家にもほしいな。。。
そしてこちら。
二方向に1/4円でくり抜かれています。
実に印象的。
単純では済まさない意気込みを感じます。
実に意匠的に考え抜かれたデザインです。
好みもありますが、なかなかこのデザインを
採用しようと考える人は少ないはずです。
ちょっと、使いこなせない。。。
全体の中でこの意匠的なズレを補正する技術が必要になってきます。
こちらは室内から見返した写真です。
照明も素敵です。
美味しいコーヒーが飲みたい。。。
こちらも居間の一角です。
小上りがあります。椅子に座った人と、
畳に腰かけた人の目線が合うよう設計されています。
タタミ下の立上りは、外からの空気が入ってくる引戸になっております。たしか。
外の新鮮な涼しい空気が入るよう計画されています。
小上りにあるちょっとした床の間。
左の斜めの壁。これは建具で開くと中がかわいらしい棚になっております。
ぜひ見に行ってみてください。
これも居間の一角です。
奥に続き間があります。
このようにいろんなスペースが居間にくっついているような不思議な間取りです。
奥の間です。
我ながらいい写真です。
凝った照明にガラスの格子。
茶室に通じる、奔放ながら均整の取れた意匠です。
本当に素晴らしい。
縁側。
ぐるりと窓。
角まで窓。
しかもその下にはかわいいアールの台がついています。
にくいです。
今回の台風で相当ダメージを食らったようですが
この角のガラスが2枚割れたそうです。
そして木の枝が屋根に刺さったとお話しておりました。
それいにしても、水平に連続する透明の窓。
その上下に光を拡散させるためであろう、スリガラス。
当時としては大変に不陸精度の良いガラスで
現在のガラスと全く遜色がないレベルだったそうです。
こちらは縁側に面した書斎。
景色も望むことができます。
光も入ってきます。
全体像がつかみにくい間取りです。
ちなみに間取りはこのようになっております。
聴竹居 http://www.chochikukyo.com/より引用
こんなかわいい違い棚的な飾り棚。
窓、棚、机が一体的なデザインです。
台所。
こちらは白い空間で
しかも大きな窓がついております。
古いですが当初はすがすがしく、清潔であったに違いありません。
こちらは浴室。
これもまた、天井も高く、白を基調としているので上部の光が柔らかく回ります。
縁側からの景色。
眼下に景色が広がります。
左下に屋根が見えますが、別棟の茶室です。
かなりな傾斜地に建てられています。
何年か前に修復されたはずですが、なかなか、急な斜面です。
と、駆け足でお伝えしてまいりましたが
この住宅、国重要文化財に指定されております。
現在は竹中工務店の所有となっておりますが、
地域の方の協力でイベントや見学ができるようになっております。
「其の国の建築を代表するものは住宅建築である」 藤井厚二
くぅ~実にしびれます。
これを伝えたくて、仕事後回しにして執筆したのでした。
住宅は民度を露呈してしまいます。
文化的に成熟した現在だからこそ、より良質な住宅を残さねばなりません。
それは、性能だけではありません。
佇まいも大変に重要なのです。
酒造家・金融業の「くろがねや」の次男として生まれ
経済的にも文化的にも恵まれた環境で育ったのにもかかわらず
このような決して大きくはない、滋味深い建築を志し
庶民の手本となるような、住宅像を描き実験した。。。
その姿勢にも感銘を受けざるを得ません。
人を幸せにするべき建築家の使命に、まさに忠実な生き様です。
若干熱くなってしまいました。
また次回をお楽しみに!
ご興味ある方は下記ものぞいてみてください。
聴竹居ホームページ
http://www.chochikukyo.com/
リクシル/INAXREPORT
http://www.biz-lixil.com/resource/pic/column/inaxreport/IR173/INAX173_04_14.pdf
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