【七十二候の杜とモノクローム】

 

この住宅は緑深い杜に隣接する．マンションリノベーションの依頼だったが私が神戸出張の際に，神戸在住の方から偶然にも連絡をいただいた．まさに偶然というか縁を感じるスタートであった．そこから二年ほどかけ完成したプロジェクトであった．

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札幌で購入するマンションが決まり，現地に出向き図面を見ると求める方向性ははっきりした．二部屋をまたぐように設置された連続する大きな開口からの絶景が広がっていた．窓を分断する間仕切り壁や建具を取り払い，大きな連窓を露わとし，フレーミングする杜の景色を空間の主役に据えることとした．景色を構成する樹林は山麓へと連なり，凛とした厳かな雰囲気が広がっている．目の前に広がる緑景は四季を通じて日々刻々と変化しながら室内へと飛び込んでくる．その移り変わる色彩が美しく見えることを意識しながら，室内はモノトーンな色調に抑えられた．

 

玄関からも廊下を介しストレートに借景が目に入る．またLDKは廊下よりも一段高く，天井の高さや壁の上部にガラスを用いるなど，空間を構成するエレメントを巧みに操作しながら豊かな居心地を作り出している．中でも念願のダイニングテーブルとキッチンをストレートに配置して空間を広く使えるよう元のプランからは変更している．限りある面積の中ではあったが当初よりも随分と伸びやかになった．

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四季折々七十二候，美しく移ろう杜を室内へと還元できるよう配慮し，静謐な空気感を持つ住居へと仕上げることができたように思う．自然の彩色と建築のモノクローム．偶然のご依頼から最良の形として結実できたことをうれしく思う．