7-STEPS

札幌市の地下鉄沿線近くに計画された集合住宅.

周囲はアパートが立ち並ぶような立地であり,従前よりよく見られる様式が立ち並ぶ.

クライアントは多くの賃貸物件を手掛けおり,経験上入居率を上げる試みをされていた.

その試みを踏襲しながらも,建築的に付加価値をつけることを所望された.

収益物件にカテゴライズされる集合住宅は,採算上よっぽどでない限り,建築的に構成することが難しく,空間の余白が作りにくかったり,材質等仕様も既製品に限定されることが多い.

今回も多分に漏れずコスト調整に苦労したが,どうにか空間的な豊かさを織り込んだ.

橙に彩られた建物は既往のグレー感が否めない街並みに埋もれることのないよう挿入され,周囲のアパート街へ新陳代謝を促している.

水平展開するヴォリュームは通りに対しても視覚的な伸びやかさを与えながら物理的にも広がりを与えている.

それぞれの住戸は天井高3.5m程の気積を持ち,その内部には7段のステップが架かる集合住宅としては珍しい構成となっている.

開口部はプライバシーを守りながら大きく外へ穿たれ,内部へ十分な光と開放感を与えている.

半層ずれた洋室の下部には,集合住宅では獲得しにくい収納量が大きく確保されている.

二階の窓からは札幌の山並みが一望でき,贅沢な視界が開けている.

白で整えられたインテリアは,住まい手によりいかようにも彩ることができるキャンバスでもある.

集合住宅というやや公の建物の役割は,賃貸という束縛されない自由を獲得させ,「普通」とは異なる空間に暮らしてみるという「空間試行の場」の提供でもあるのではないだろうか.

友人たちにこの新居を紹介している彼はどこか誇らしげに見え,その光景は実に微笑ましく思えた.

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