2018.7.10
雑誌「Replan」の次々号123号「北の建築家」コーナーに
「森の素形」の掲載が決定致しました.
写真家の佐々木育弥氏による撮影が先日無事完了致しました.
どのような構成になるか今から楽しみです.
下の写真は雪景色ですが,今回は夏の緑が鬱蒼とした写真になりそうです.
2018.7.10
雑誌「Replan」の次々号123号「北の建築家」コーナーに
「森の素形」の掲載が決定致しました.
写真家の佐々木育弥氏による撮影が先日無事完了致しました.
どのような構成になるか今から楽しみです.
下の写真は雪景色ですが,今回は夏の緑が鬱蒼とした写真になりそうです.
2018.7.10
雑誌「Replan」の次々号123号「北の建築家」コーナーに
「森の素形」の掲載が決定致しました.
写真家の佐々木育弥氏による撮影が先日無事完了致しました.
どのような構成になるか今から楽しみです.
下の写真は雪景色ですが,今回は夏の緑が鬱蒼とした写真になりそうです.
一級建築士事務所 GLA/SAPPORO
壁 層 と 樹 冠 屋 根
S A P P O R O / 戸建新築

【壁層と樹冠屋根】
札幌の都心部に比較的近い場所にこの「壁層と樹冠屋根」はある.現地に赴くとマンションやアパート,店舗に事務所,新旧の住宅が林立している.この猥雑なまちの中に住宅然としない一見何の用途の建築かがわからないような「特異点」を埋め込むことが素直なような気がした.決して広いとは言えない敷地の中でいかに住まう領域を獲得し,知覚や体感として実面積以上の広さを享受することができるのか.さらにできうれば贅沢にも中庭という大きなヴォイドを抱くことはできないものか.まちなかというノイズの中のオアシスの在り方を模索することとなった.
建築に精通した依頼主からは「森の素形」の哲学を反映したいという要望をいただいた.端的に「森の素形」は自然に寄り添いながら森のエッセンスを抽象化して建築へ取り込んでいる.様々な形態や素材,色,光が互いに異なる音を奏でながら一つの楽曲へと紡がれている.つまり今回の計画においても空間を構成する要素の複雑な掛け合いを大切に設計することとした.
敷地における建築内外は長いアプローチ,大きな木架構の屋根,大きな中庭,樹幹のような壁の層,オーバーラップする障子の天蓋など,独立しながらも協調する要素によって構成されることとなった.樹冠のように広く架かる屋根の下は一体どうなっているのだろうか,と不可解さが通りゆく人へ投げかけている.スケールアウトした入口は天井が高く,奥へと続くまっ白なトンネルに導かれる.街の喧騒から少しずつ心身を禊ぎながら異世界へ歩みを進める.そうして通りから見えた樹冠屋根のかかる中庭に出くわす.屋根は透明で光の溢れる街の谷間のようなヴォイド.はっと息を呑み,切り取られた自然に身をゆだねながら,玄関とはわからないほどのガラス戸をくぐる.
内部には幾重にも樹幹を抽象化した壁が層を成し,緩く分けられた「間」が広がっている.次の「間」もチラリと見えるのにすぐには行けない構成となっている.全体はシンプルなワンルームに違いないが意図的に配された壁によって空間を細分化し「森の素形」同様,居場所を増やす試みをした.それぞれの分節された小さな「間」は断続的に連なって相互に展開してゆく.レイヤー化された空間は微地形に沿いながら広い,狭い,高い,低い,明るい,仄暗いという抑揚を伴って移り変わってゆく.四季を問わず外で過ごせるテラスへはどこからでも出入りができ,同時に吹抜けは空間を上部にも拡張している.見え隠れしながら全方位に広がりを知覚する様はちょうど森の中に佇んだ体験のようである.それはまさに森に接続する「森の素形」で獲得した空間観ではあったが,まちの中においても換言することができたと言えよう.
この「壁層と樹冠屋根」では一建築家として北国の市街地における「住宅の可能性」を提起し,「建築空間の本質」に迫ることができた.そして人と建築,都市と自然を見つめ,この住宅は初めに標榜した特異点としてのオアシスになりえたのではないかと信じている.