​室蘭の半住居

山間の,しかも海を望む住宅地にこの半住居はある.施主は英会話やピアノの教室を営みたい,と住宅ではあるが人が絶えず出入りする半公共性のある住居をご所望された.また建築にも造詣が深く,直方体のスッとした建築を好み,同時に室蘭に似つかわしい外観を模索したいと仰った.確かにあたりを見渡すと,この室蘭も札幌と違わず,サイディングばかりの味気ない街並みであった.議論を重ね,内部に用いているカラマツ合板を外部にも使用し,変形の押縁下見板張とした.その行為は直方体という強い形をヒューマンスケールに落とし込む操作でもあった.いずれはグレーに退色し,山の緑と馴染みながらも自然に拮抗する量塊になってゆくことを期待している.また内部では「抜け」の多い空間をご所望され,縦横に空間が展開してゆく.玄関は土間空間であり2枚のグレー壁に挟まれた谷間空間である.谷底には上部より光が降り注ぎ外部に近い空気感である.谷間の壁は折り紙のような階段を纏い,上部にはブリッジやデスクも見え,「公」の谷間に家族の動きが見え隠れする.つまりは半公共性を持つこの谷の空間を中心に公私空間がレイヤー状にスイッチする.それを助長する2枚の壁は,柱型に分解され,天井を突く.2階には3.7mもの天井高を与えた.28畳もの大空間を上下ロフトと居室空間に分け,3畳を1単位とする柱のグリッドでさらに緩く分節されている.それらは自由に家具やカーテンで分けられ,例えば3畳を8つ,6畳を4つ,12畳を2つなどというように柱の木立の中で組み立てることができる.住まい手の能動性を試す構成ではあるが,難なく順応することであろう.このスタイルは彼らにとっては相応しいのである.空間に対する既成概念をどれだけ取り払うかが,住宅の本質的在り方に近づく鍵となる.この半住居はそれを体現し得た稀有な建築である.私たちは近代が追い求めた大量生産的画一かつ万能な間取りや仕上材,照明の質といった無意識の呪縛からそろそろ解き放たれなければならない.

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