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S T O R Y - C A S E   0 2
「室蘭の半住居」

​―素材の力を活かし公私がスイッチする半住居の家―
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 室蘭市の山間合いの住宅地に立つ住まい.ラーチ合板の外壁は,周囲の自然に溶け込みながら存在感を際立たせています.

 吹き抜けになった玄関は2枚の木毛板の壁に挟まれるようにして,奥へと続くコンクリート土間空間.右手にダイニングを兼ねた奥さんが営む英会話教室があり,左手には2階の住居区へと向かう階段があります.

 「土間空間は生徒たちが従来する外部空間です.」と奥さん.自身も建築の知見を持つご主人は,「公私を分けながらも,緩やかにまじりあう家にしたい」と考えて,建築家,高野現太さんに依頼.お互いにアイデアを出し合いながら,吹き抜けを介して階段やブリッジから家族の動きが見え隠れする「半住居の家」が完成しました.

 

 内部の壁は外壁と同じくラーチ合板,床にラワン合板を採用.1階は土間空間と連続するように床

をグレーに,天井は白く塗装しています.黒皮鉄で仕上げた2階への階段は,異素材の出現が公私の意識の境界に.プライベート空間となる2階の床はラーチ合板の壁と同じく,ラワン素地の色味をそのまま生かすなど,床の色や素材が,シーンの切り替えを促していています.

 木の素材感をより一層感じるのが寝室を兼ねた28帖の居室.仕切りを排除し,構造用の柱が林立するその空間は,木の風合いと相まって森の木立の中にいるような印象を受けます.「柱を軸に家族それぞれがスペースを作っています.個室だと見える景色はずっと同じ.可変性のある部屋にしたかったんです」とご主人.公私が交差しながら、時間の経過とともに見える景色も,個族の暮らしも,素材の色や風合いも変化する.「クロスやサイディング,LDKといったいわゆる「住宅」と

いうものに捉われたくありませんでした」というご主人の言葉どおり,「半住居の家」には,住宅が纏う既成概念からの自由がありました.

取材/Replan

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COLOR

合板やコンクリート,木毛板など素材そのものの色を生かしている家.公共性のある一階の床は,土間のコンクリートと連続するようにグレーに塗装.天井は白色に拭き取り塗装を施すなど,同素材ながらも緩やかな色の変化で適切な雰囲気をつくり,公私を分けている.

MATERIAL

ベースとなるのはラーチ合板の壁とラワン合板の床.そこに空間を縦に分けるための大きな2枚の木毛板の壁,外部空間を演出する土間のコンクリート,上下階をつなぐ鉄板の階段など異素材が適材適所に入り込み,木材と美しく調和している

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1階の土間空間は,内部でありながら外部的空間.土間のコンクリートを基調にして,床はグレーに塗装.

上下階をつなぐ黒皮鉄で仕上げた重厚な階段は,合板や木毛板の素材の中で際立ち,公私の切り替えに作用する.

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ダイニングの上の収納を兼ねた吊り天井は奥さん好みのデニムブルーに.圧迫感が出ないように,柔らかく周囲を映し込むPタイルを用いた.

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新築時は明るいオレンジ色だったという外壁は、経年変化で理想どおりのグレーに退色してきた.

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「公」に対して「私」がちらりと見えるように,コンクリート土間を挟む木毛板の壁から階段やラーチ合板のデスクが吹き抜けに迫り出していく.内に開く吹き抜けは,木立のなかの谷間のよう.

バレエを習っているというお子さんたち.2階のリビングの横に,鏡のある練習スペースを設置.トーシューズでも傷がつかないリノリウムというバレエ用の床材を張っている.

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ラーチ合板で仕上げたデスクがせり出す木毛板の壁.明かりを灯す家族の居室から,木の素材感が温かくあふれてきて,木毛板と美しいコントラストを描いている.

外壁は経年変化を楽しみながら,周囲の自然となじむようにラーチ合板を選び,縦の下見板張で印象的に仕上げている.

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1階のピアノスペースは,ピアノ教室としてゆくゆくは場所貸しを想定している.

素地の素材感が存分に生きる柱が林立した28帖の居室.家族は柱を軸に机やベッド,棚などを使って自身のスペースを確保する

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ダイニングを兼ねた英会話教室.左側にキッチン,奥にはユーティリティーがある.

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