
【OFFICE MMY】
札幌・南円山に計画したオフィスインテリアである.人を迎え対話し,時には人々が集う場所として,華美な装飾に頼るのではなく,素材そのものが持つ質感と空間の構成によって居心地のよい場所をつくることを考えた.
通りに面したファサードには大きなガラス面が広がっている.内部の様子を街へと開くことで,オフィスでありながら閉鎖的な印象をつくらず,人が自然と立ち寄ることのできる開かれた場所を目指した.昼間には通りから木に包まれた内部の様子や人の活動が垣間見え,夜になると室内に灯る明かりがガラスを通して歩道へと広がる.人の往来が多いこの場所だからこそ,内部だけで完結するのではなく,建築の中で営まれる活動や光が街へと滲み出し,通りの風景に働きかけることを考えた.
壁には杉材,天井にはカラマツ材を用い,木の柔らかな表情で空間を包みながら,コンクリートとガラスという硬質な素材を組み合わせている.木目やコンクリートの肌,ガラスの透明感という異なる素材の表情を生かし,それぞれを対比させることで,落ち着きの中にも緊張感のあるインテリアを目指した.
空間の中央に置かれたカウンターは,直線ではなく120度の角度を持つ形とした.視線や人の向きを一方向に縛るのではなく,異なる方向から自然に人が寄り付き,それぞれの距離感で会話が生まれる場所を考えたものである.その周囲には余白を十分に残し,日常の執務だけではなく,キッチンスタジオを使った料理教室や,小さな演奏会などにも使うことのできる,ゆとりのある空間とした.
右手に連続する杉の壁には二枚の扉を隠している.閉じている時には一枚の木の壁として見えながら,扉を開くとその先にバックヤードとトイレが現れる.また,空間の奥に設けた二つの商談室への入口も壁面家具の中に組み込み,一見しただけでは建具と感じさせない構成とした.必要な機能を表に並べるのではなく,壁や家具の中へ静かに納めることで,ひと続きの空間としての落ち着きを保とうとした.
すべてを一度に見せるのではなく,扉を開き,奥へと進むことで次の場所が現れる.木に包まれた穏やかな空間の中に,人が働く場所,人と対話する場所,料理を楽しむ場所,音楽に耳を傾ける場所が緩やかに重なっている.オフィスという用途だけに閉じることなく,人が自然と集い,さまざまな時間を共有しながら,少しずつ愛着を育んでいける場所をつくろうとした.


















