2018.7.10
雑誌「Replan」の次々号123号「北の建築家」コーナーに
「森の素形」の掲載が決定致しました.
写真家の佐々木育弥氏による撮影が先日無事完了致しました.
どのような構成になるか今から楽しみです.
下の写真は雪景色ですが,今回は夏の緑が鬱蒼とした写真になりそうです.
2018.7.10
雑誌「Replan」の次々号123号「北の建築家」コーナーに
「森の素形」の掲載が決定致しました.
写真家の佐々木育弥氏による撮影が先日無事完了致しました.
どのような構成になるか今から楽しみです.
下の写真は雪景色ですが,今回は夏の緑が鬱蒼とした写真になりそうです.
2018.7.10
雑誌「Replan」の次々号123号「北の建築家」コーナーに
「森の素形」の掲載が決定致しました.
写真家の佐々木育弥氏による撮影が先日無事完了致しました.
どのような構成になるか今から楽しみです.
下の写真は雪景色ですが,今回は夏の緑が鬱蒼とした写真になりそうです.
一級建築士事務所 GLA/SAPPORO
S T O R Y - C A S E 0 4
「森の素形」
― STORAGE FOREST/自然とつながる収納の森 ―
大きな幹のような収納を森に見立てる.
樹皮の表情を思わせる荒々しい質感のカラマツの合板を使用した収納の柱を住宅の中央に配置.合板は厚さ18mmの特注で強度を持たせ,1階から2階まで最大の高さ5462mm,縦に3分割とした.写真左の大型収納に家電や食品のストックを,右の壁にはゴミ箱,黒皮鉄板のカウンターの下にも収納スペースを用意した.ダイニングテーブルと一体化したカウンターはシンクにカバーをすることで生活感を消すことに成功.
取材/Casa BRUTUS
KITCHEN & DINING
たくさんのモノをすべて収納できる収容力.
住宅の中央に設けられた収納の柱は全部で8つ.その中でもキッチン&ダイニングに面したものが一番大きい.モノが多い場所にはたっぷりの収納スペースが用意されている.
家電など,入れたいモノのサイズに合わせて棚板を調節した.細かなモノはファイルボックスを使用してきっちり並べていくのが高野家ルール.調理道具などはキッチンカウンターやシンクの下にある引き出しに.周囲に収納があることも使い勝手がいい理由だ.
ダイニング側の浅い収納には趣味の茶器など.裏側にはインターホンや照明のスイッチが隠されている.
LIVING
木をイメージした幹のような収納.
柱の上が吹き抜けになっていて, さらに迫力を感じるリビングの収納.左右どちらにも開口部があり,冬は雪景色,春には庭の緑が全面に見えるので不思議と圧迫感はない.上段の扉には耐震ラッチを採用.高いところはさすがに脚立が必要となるので,使用頻度の少ないモノに.下段は高野さんのCDコレクションと書類など.CDはざっと1000枚はあるが,扉にも使われている合板の棚板はその重さにも耐えうる.
黒皮鉄のLアングルを溶接して板にし,柱の間にテレビ台を設置.居心地がよく家族が集まる場所.
リビングからオフィスを見る.どの空間も緩やかにつながっているのがわかる.カラースケールにこだわった異素材の組み合わせが独特な表情になっている.
収納の柱に面した2階の廊下.シルバーの天井が夏の緑や雪景色を映し出す.リビングの上,ライブラリーとして使われている部屋から眺め.収納の柱の間から左右に振り分けられた寝室,バスルーム,茶室へと移動する.
【収納を建築化して自由になる】
札幌の中心地から車で約30分,眺望のいい郊外の山麓に位置する住宅「森の素形」は建築家,高野現太さんの自邸兼オフィスだ.「単純に緑が好きなので自然が感じられて建築や庭をずっと作りこんでいけるような余白のある土地を探していました.札幌で条件に合うまとまった土地はなかなか見つからなくて,敷地探しだけで3年かかりました」と高野さん.
この数年で宅地造成が入り,周囲に住宅が増えたが,裏山に野生の鹿の群れが訪れることもある自然豊かな環境.敷地の一方が崖になっているため視界が開けていて,遠景に山々が見え,森の中に佇んでいるような一軒家である.
「何度か敷地の森を歩いたときに,場所によって見える景色が全く違ったんです.群生する木々の力強さを感じて,自然と拮抗する佇まいで,自然の樹木の森の原型のようなエッセンスを持った住宅がいいなと考えました」
大きな幹を思わせる構造体を建築の輪郭として建てたシンプルなスクエア型のプラン.構造体の間に生まれた空間に住居スペースと中庭を交互に入れ込んだ.開口部を大きくとり,家の中のどこからでも周囲の緑を感じることができるようにした.
「実際の森では木々の間にポケットのような小さなスペースがあります.そういった居心地の良い空間が連続していくと,森のような場所になるんじゃないかと」
室内にも木立に見立てた長大な柱を建てた.天井までそびえる柱はすべて収納だ.
そんな収納の森の間を縫うように,家族が暮らしている.吹き抜けがあり,空間に仕切りはなく,全体が緩くつながっている.収納の奥にチラッと家族が見え隠れし,誰がどこにいるのか気配を感じられるのが,意外と心地いいと言う.「森の延長のような空間を考えると,樹木に見立てた収納は必然でした.収納家具を建築化することで,外とつながるための壁だけでなく,収納自体からも自由になれたような気がします」
自然とつながる仕掛けは室内の素材にも.木,鉄,タイルと無塗装の素の素材が組み合わされているのが特徴のひとつだが,それぞれに役割がある.シルバーの天井とリビングの壁は外の景色を反射させ取り込むためのもので,テクスチャーの違いによる差異や季節による表情の変化も楽しい.
「次は屋上から木立に向かってアプローチを作ったり,下がった場所に東屋を建てるのもいい」
森と共生する自由な空間は自然の中へと広がっている.
STORAGE FOREST/建築的収納術
01 収納を家の中心に集め周囲に空間を作る.
森の環境を室内に取り込むためには外壁を自由にして,窓を好きな場所に開けられるようにする必要があった.生活になくてはならない収納は樹木に見立てた柱にして,建物の中央に配置することで外壁がフリーに.柱の周りに自然と空間ができて,それが意外と自由度の高いスペースになった.
02 必要な場所に必要なモノを,分散収納を採用.
モノと収納は適材適所.バスルームの近くにバスタオル,キッチンには台所用品と,その付近で使うモノを収納する分散収納を採用.モノが行方不明にならず,集中収納よりもずっと使いやすい.吹き抜けや中庭があり小さな空間が連続しているので,中央に位置する収納は動線とも連動している.
03 収納は用途を限定せず空間性から割り出す.
そもそもは収納が少ないタイプの建築家という高野さん.設計の段階で空間性から収納を割り出していく.押し入れや食器棚などと用途を限定しすぎず,収納スペースとして考える.普段の生活では黙っていてもモノは外に出てしまうもの.片付ける際に,収納できるスペースがあるだけで気は楽になる.
04 置き家具は使わずに家のトーンに合わせて作る.
椅子とソファ以外,テーブルやキャビネットなど,手がける住宅のほとんどの家具は,家のトーンにあわせて制作している.「森の素形」では幹としての収納の形状がこの土地においては必然だった.それぞれの土地や住宅,ライフスタイルに合わせて,家具と収納と建築との最適な関係を模索する.
05 理想のライフスタイル優先,収納にしばられすぎない.
収納を重視しすぎると,暮らしの大切なことを見失うことに.住まい方や理想のライフスタイルの実現を第一に,収納プランを考えていくことが大切.この家の場合は風景との関係、外とどうつながるのかを優先している.現在,家族全員のモノは十分に収納できているが,定期的に見直しを行う.
上下の空間をつなぐ吹き抜けレイヤー
収納の柱に架けられた回廊のような2階部分.建物に大きさの異なる吹き抜けが設けられ,上下の空間をつないでいる.家族がどこにいても気配を感じることができる.
「外の間」で屋外空間を室内空間に割り込ませる.
大きな幹のような柱を住宅の周囲にある木々と呼応させるように建ち並べ,柱の間にできた空間を「外の間」と呼んで,室内へと取り入れている.どこにいても外の自然を意識できる.
柱の収納は空間の中央に配置
背骨のように住宅の中央列が,1階から2階までつながる柱のような収納家具になっている.両サイドから扉があけられるものもあり,場所による使い勝手を重視している.
外と地面と同じ床レベルのリビングで庭とつながる
エントランスからダイニングへと進んでいくと一段下がったところにリビングがあり,地面と同じ床レベルとなる.冬は雪に囲まれているが、春には庭の草花を近くに感じられる。