銀斜壁の境界/ginsyaheki no kyoukai

「眺望だけはこだわりたい.あとは自由に描いてみて下さい.」と建築家冥利に尽きる言葉を頂いた.そこからおよそ3年に渡る建築の旅が始まる.

「眺望」を求め土地探しから,紆余曲折を経てようやく辿り着いた「銀斜壁の境界」.敷地は南側に面するがそのほとんどを意図的に閉ざし,V時に切れたスリットから光を制御している.それにより住宅内部においては,道路向かいの住宅や通りからの視線を遮ることもできる.それ故,内部では落着いた生活を獲得し,北側に大きく開いたパノラミックな開口から札幌を一望することができる構成とした.また道路面には今後植樹される樹木の壁,スカート状の銀斜壁の下,住宅内とグラデ―ショナルに通りと接続される.そのスカート内の中間領域は大きなテラスとなり,雨の日でも外で佇むことのできる庭となる.玄関に入ると,そこは谷底のような空間で意識が自ずと上へ向かう.造形的な小階段の先にストッキングのような透けた階段が架かり,そこへ上部スリットから一筋の光が印象的に射し込む.空を望みながら上階へ移ると,天井に架かるリズミカルな構造梁が視線を眼下の景色へと誘う.7年もの間切望した見晴らしである.札幌らしく街も山並みも両方を見渡せ,四季の移ろいを刻々と感受することができる.一方見返せば,谷間で分節されたリビングは,銀斜壁に寄り添う形でこじんまりと包まれた空間となっている.LとDKをつなぐ書斎は鉢植えで満たされる小さなテラスに面しており,一室ながらどこにいても居心地が異なるよう意識して計画されている.縦にも横にも複雑に絡み合う構成と効果的に挿入した銀斜壁によって,住宅の内外にも空間が展開する実面積以上の豊かさを内包することとなった.

通りから望むと「銀斜壁」は空色を鈍く映し込み,柔らかな様相を呈している.そして大きく迫り出すことで,内と外を分かつ「境界」に大らかな豊かさを与えることができたように思う.

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